~About the Song~

表題曲は、1970年にリリースされたキンクスのアルバム『Lola Versus Powerman and the Moneygoround, Part One』の収録曲です。シングルとしては、全英5位を記録しています。デビュー初期の爆発的な人気が落ち着き始めた頃の曲でLolaと合わせ、久々のヒット曲にして、キンクスの代表曲です。

素行の悪かったキンクスは1965年、米国音楽家連盟からアメリカでの活動を禁じられます。ブリティッシュ・インベージョンの真っただなかで、アメリカから追放されたキンクスは時代の流れから外れた存在となります。レイ・デイビスの扱う詩のテーマも、労働者階級の営みや、田舎生活への憧れなど、当時、主流となっていたサイケデリック・カルチャーとは全く異なり、社会風刺的な詩を展開していました。表題曲では、文明社会への批判を展開しています。

~Translation~

I think I’m sophisticated
‘Cause I’m living my life like a good homosapien
But all around me everybody’s multiplying
‘Til they’re walking round like flies man
僕は自分の事をイケてると思ってるよ
だって、出来の良い人間としてしっかり暮らしているからね
でも、僕の周りでは、忙しなく歩き回る
ハエ男みたいな奴ばっかり増えてるんだよね
So I’m no better than the animals sitting in their cages
In the zoo man
‘Cause compared to the flowers and the birds and the trees
I am an ape man
僕は、動物園の檻の中にいる動物たちみたいなもんさ
だって、お花や鳥や木なんかに比べたら、僕はエイプマンだもん
I think I’m so educated and I’m so civilized
‘Cause I’m a strict vegetarian
But with the over-population and inflation and starvation
And the crazy politicians
僕は自分の事を教養も気品も高い男だと思ってるよ
だって、完璧なベジタリアンだからね
でも、世間では、人口過剰、インフレに飢餓は起きているし
狂った政治家だっているんだ
I don’t feel safe in this world no more
I don’t want to die in a nuclear war
I want to sail away to a distant shore and make like an ape man
※1
この世界には、もう安心なんてないんじゃないかな
核戦争なんかで死にたくないしさ
どこか、遠く彼方まで船で行ってしまいたいよ
そこで、エイプマンらしく暮らしたいんだ
I’m an ape man
I’m an ape ape man
I’m an ape man
I’m a King Kong man
I’m voo-doo man
I’m an ape man
※2
僕はエイプマン
そう、エイプマン
エイプマンさ
僕はキングコングマンに
ブードゥーマン
エイプマンなのさ
‘Cause compared to the sun that sits in the sky
Compared to the clouds as they roll by
Compared to the bugs and the spiders and flies
I am an ape man
だって、お空のお天道様と比べてごらんよ
流れていく雲と比べてごらんよ
蜘蛛だったり、ハエだったり、虫と比べてごらんよ
僕はエイプマンだろ
In man’s evolution he has created the cities and
The motor traffic rumble,
but give me half a chance
And I’d be taking off my clothes and living in the jungle
人類は進化の過程で大きな都市を作ったんだ
そこでは騒がしく自動車が走ってる
もし、機会を与えてくれたら、服なんか脱ぎ捨てて、ジャングルで暮らすんだけど
‘Cause the only time that I feel at ease
Is swinging up and down in a coconut tree
Oh what a life of luxury
To be like an ape man
だって、気持ちが安らぐのは
ヤシの木で、ぶらぶらスウィングしている時だけだもん
あぁ、なんて贅沢なんだろうか
エイプマンの暮らしは

repeat※2

I look out my window, but I can’t see the sky
‘Cause the air pollution is a-fogging up my eyes
I want to get out of this city alive
And make like an ape man
窓から外を見ても、空は見えやしない
だって、大気汚染で視界が霞んでいるからさ
この街から生きて出ていきたいよ
そして、エイプマンとして暮らすんだ
Come on and love me
Be my ape man girl
And we will be so happy
In my ape man world
おいでよ。上手くやっていこう
愛しのエイプマンガールになってくれないかい
そしたら、僕らはハッピーになれると思うんだ
僕のエイプマンワールドでさ

repeat※2

I’ll be your Tarzan, you’ll be my Jane
I’ll keep you warm and you’ll keep me sane
And we’ll sit in the trees and eat bananas all day
Just like an ape man
僕は君のターザンになるよ。君はジェーンになれるさ
寒けりゃ僕が君を暖めてあげるし、君は僕を安心させてくれる
木の上で座って、一日中バナナを食べていようよ
エイプマンみたいにさ

repeat※1
repeat※2

~First Impression~

レイ・デイビスのくたびれたボーカルが心地よく感じます。世捨て人願望が掻き立てられます。ポップで拍子の抜けたメロディと、文明批判の辛辣な詩とのギャップがレイ・デイビスらしいです。メロディには一定の諦めすら感じてしまうような脱力感があります。半世紀前の曲ですが、今の時代にも通じる社会へのストレス・不満が詰まっています。逆に言うと、文明への反発というのは、いつの時代にも付きまとう普遍的なテーマなのかもしれません。

~Interpratation~

英語自体、あっさりとした分かりやすい詩になっています。今回は、他の作品との比較をしてみたいと思います。比較対象となる作品はSimon & Garfunkelの代表作I Am A Rockです。こちらの曲も社会が嫌になった男を描いた詩で、”I Am A Rock“と、メタファー表現を使っている点もApemanと共通します。下記、I Am A Rockの象徴的な箇所を抜粋します。

I’ve built walls
A fortress deep and mighty
That none may penetrate
I have no need of friendship
Friendship causes pain
It’s laughter and it’s loving I disdain

I am a rock
I am an island

僕は壁を気づいたんだ
それは深くて頑丈な要塞なんだ
おかげで、誰も僕に近寄れないんだ
友情なんて要らないさ
友達がいると、苦しまないといけない
笑い合ったり、愛し合ったりするのはまっぴらごめんだよ

だって僕は、ただの岩だからさ
だって僕は、ただの孤島だからさ

◆生い立ちの比較

作品のリリース年など、生い立ちについて比較してみます。

Apeman』の場合
1970年、イギリスのレイ・デイヴィスによって書かれた作品です。詳細はAbout the Songで前述。

I Am A Rock』の場合
1965年、アメリカ。ポール・サイモンの初ソロアルバム『The Paul Simon Songbook』の中の作品です。サイモン&ガーファンクルとしてのデビュー・アルバム『Wednesday Morning, 3 A.M.』が評価されず、失意の中で、一人アメリカを離れてロンドンで音楽活動をしていたポール・サイモンが書いた詩です。

I Am A Rock』はアメリカのソングライターの作品ですが、イギリスで書かれたという意味では『Apeman』と同じ。『You Really Got Me』など、初期のヒットの後、なかなか大きなヒットを生み出せなかったキンクスの状況は、デビュー作で失敗したポール・サイモンの状況と重なります。両者とも、世間からの評価と、自身の期待とのギャップに悩んでいるからこそ生まれた詩と言えるかもしれません。

◆語り手の比較

どちらも曲のタイトルで語り手を表していますが、タイトル以外での表現も含めて、比較してみます。

Apeman』の場合
[good homosapien],[apeman],[King Kong man],[voo-doo man],[Tarzan]

I Am A Rock』の場合
[rock],[island]

レイ・デイヴィスは、文明社会への批判を、自然と共に生きるエイプマンに語らせました。対して、ポール・サイモンは人間関係が嫌になった男に「俺は心の動じない岩だ、島だ」と、虚勢を張らせました。

◆スタイル・作風の比較

それぞれの作風について、比較してみます。

Apeman』の場合
エイプマンが様々な文明社会の問題に目を向けて批判していくスタイルです。それはレイ・デイヴィスの社会へのメッセージであり、風刺作品と言えます。

I Am A Rock』の場合
「俺は岩だ」そんな強がりを言う、繊細な男の心情の吐露であり、私小説のような文学的作品となっています。

極端に言えば、『Apeman』は風刺に富んだジャーナリズム。『I Am A Rock』繊細な心の声を綴った文学作品と言えます。

◆読み手の感情の比較

読み手のエモーションについて比較してみます。

Apeman』の場合
文明が社会を蝕んでいてる、という事実の報道であり、ジャーナリズム作品として、読み手には「気付き」「危機感」などの感情が働きます。それは、フィクションではなく、同じ環境にいれば誰にでも当てはまる注意喚起と言えます。

I Am A Rock』の場合
一人の繊細な男の心の中を描いた文学作品であり、読み手の「同情」や「共感」を引き出します。「誰からの干渉もシャットアウトしたい時あるよね」「フラれた時、こう思ったな」など、誰しも共感できるテーマと言えます。そして、現在進行で、作品の男と同じ心理状態にいるような人にとっては、救いとなるのかもしれません。

疑問点~Unclarified issues~

◆ハエ男?

下記の部分が良く分かりませんでしたが、勢いで訳しました。

But all around me everybody’s multiplying
‘Til they’re walking round like flies man
でも、僕の周りでは、忙しなく歩き回る
ハエ男みたいな奴ばっかり増えてるんだよね。

直訳だと下記のイメージですが、要は何が言いたいのでしょうか。。。

でも、僕の周りでは、皆、増殖している。
そして、ハエ男みたいに歩きまわるんだ。

ハエ男にどういうニュアンスが入ってくるのかイマイチです。次に出てくるover-populationを揶揄して、臭いところに沸いてくるイメージと重ねているのか?ちょこまか鬱陶しく動きまわるイメージと重ねて、忙しい現代人の生活を批判しているのか?とりあえず、後者のニュアンスで訳してみました。

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