~About the Song~

表題曲は、1969年にリリースされたザ・バンドのセカンドアルバム『The Band』の収録曲です。彼らのオリジナルよりも1971年にジョーン・バエズがリリースしたカバーバージョンの方がヒットしたようで、そちらは米国チャートで3位を記録しています。

Dixieとは、アメリカ南部の事を指す言葉で、表題曲は南北戦争時のアメリカを舞台に、南部側の視点から敗北者の思いを描いています。戦争物は勝者側の目線で語られる事が多くなりますが、敗者の立場から南部の男の誇りや逞しさ、戦争の虚しさを描いています。

~Translation~

Virgil Caine is the name, and I served on the Danville train
‘Til Stoneman’s cavalry came and tore up the tracks again
In the winter of ’65, we were hungry, just barely alive
By May the tenth, Richmond had fell, it’s a time I remember, oh so well
俺の名前はヴァージル・ケイン。ダンヴィル補給鉄道に従事してたんだ
それは、ストーンマンの騎兵隊が線路を潰しに来やがるまでの話なんだけどさ
65年の冬、俺達は腹ペコで、死にかけていたんだ
5月10日までにリッチモンドが陥落したんだ。その時の事を俺はしっかりと覚えているさ
The night they drove old Dixie down, and the bells were ringing
The night they drove old Dixie down, and the people were singin’ they went
La, la, la, la, la, la, la, la, la, la, la, la, la, la
アイツらが南部を打ち負かした夜。ベルが鳴り響いたんだ
アイツらが南部を打ち負かした夜。奴らは歌を歌っていたんだ
ラララ…
Back with my wife in Tennessee, when one day she called to me
“Virgil, quick, come see, there goes Robert E Lee”
Now I don’t mind choppin’ wood, and I don’t care if the money’s no good
Ya take what ya need and ya leave the rest
But they should never have taken the very best
かみさんとテネシーに戻ったある日、彼女が俺に言ったんだ
「ヴァージル、早く来て、見てよ。ロバート.E.リーが行くよ」
薪割りだって嫌がらないさ。薄給の身でも良いんだ
普通は欲しいものだけ持って行って、残りは置いていくだろ
でも、奴らは一番大事なものまで持っていったんだ

repeat※

Like my father before me, I will work the land
Like my brother above me, who took a rebel stand
He was just eighteen, proud and brave, but a Yankee laid him in his grave
I swear by the mud below my feet
You can’t raise a Caine back up when he’s in defeat
親父がそうだったように、俺はここで働くんだ
南軍で戦った天国の兄貴のように、生きるんだ
まだ18歳だったけど、誇りと勇気があったんだ。でも、北軍の奴に葬られた
俺はこの大地に誓うぞ
もうこれ以上は悪さはさせないからな

repeat※2times

~First Impression~

ザ・バンドは自分の大好きなバンドです。オールディーズで抑えておくべきアルバムを挙げろと言われれば、5番目以内にはブラウン・アルバムこと『The Band』は入るでしょう。表題曲に関しては、南北戦争の事を歌っている曲としては認識していましたが、正直なところ詳細は理解していませんでした。

更に言うと、ミュージシャンによって作られた曲ではなく、民衆の中で伝承されてきた歌だと勝手に思い込んでいました。そう思わせたのは、なんとも言えない「物語り感」をメロディに感じるからかもしれません。英語を直で理解出来ない自分でも、この曲を聴くと、まるで、絵本の読み聞かせを受けているかのような感覚になります。メロディだけでなく、綺麗に計算された押韻もそう思わせる要因かもしれません。同じような感覚を持った方はボク以外にも沢山いるのではないかと想像します。

~Interpratation~

◆単語について

歴史物という事で、最低限抑えておかないといけない、単語について解説します。南北戦争について調べ始めると、終わりが見えなくなりますね。。。ポイントだけまとめてみました。

・Danville train:南北戦争の際に南部連合の補給線路として活用されていた列車
・Stoneman:ジョージ・ストーンマン大将。東テネシー州の司令官
・winter of ’65:南北戦争の事実上の終戦が1965年の4月とされる為、1月や2月を意味する?
・Richmond:アメリカ連合国の首都であり、1865年4月3日に陥落、その数日後、南軍は降伏する
・Tennessee:アメリカ南部側の州、南北戦争での戦闘規模はバージニア州に次いで2番目だった
・Robert E Lee:南部連合の軍司令官で、アメリカ史上屈指の名将として有名。穏やかで人当たりのよい人格の持ち主だった。1865年4月9日に降伏し、降伏後も南部の兵士達にゲリラ戦などに走らず投降するように呼びかけた。
・Yankee:アメリカ南部で北軍の兵士や北部諸州人を軽蔑した呼び方

◆勝利の鐘なのか、弔いの鐘なのか

下記、サビの部分に関しては色々なサイトの訳を読んでみても解釈が割れており、本国アメリカでも論争になっている点のようです。

The night they drove old Dixie down, and the bells were ringing
The night they drove old Dixie down, and the people were singin’ they went
La, la, la, la, la, la, la, la, la, la, la, la, la, la
アイツらが南部を打ち負かした夜。ベルが鳴り響いたんだ
アイツらが南部を打ち負かした夜。奴らは歌を歌っていたんだ
ラララ…

ポイントはand以降の部分の主語が誰なのかという点です。ボクの訳は北部側として考えた時の解釈です。北部側の勝利の鐘であり、歓喜の歌が歌われているというものです。では、もう一つの解釈では、どのような場面になるのでしょうか。それは、北軍に打ちのめされた南部の人々を主語として、彼らの弔いの鐘、もしくは警鐘が鳴り響き、鎮魂歌が歌われている場面です。ボクは所感で迷うことなく前者のように訳しました。後に色々調べてみて、後者のような手がある事を知ったくらいです。聴き手の描いた世界観に合う、それぞれの解釈でよいのかなと感じます。

正解はどこにもないわけですが、自分が詩の中に見た世界観を共有するとします。この場面では、字面の主語は北部側で、北軍の軍人達が戦の疲れと傷を蓄えながらも、喜びと安堵を手に入れて宴を挙げています。ただ、ボクの見た景色は北軍の姿ではありません。主人公のケインが打ちひしがれている姿です。彼の周りには両軍の死体が沢山転がっており、その中で、ケインが膝をついて途方に暮れています。勝手なイメージでは、nightと言っても真っ暗ではなく、まだ少し薄明かりが残るくらいの時間帯の形式が見えてきます。歌いながら行進する北軍の人間はケインを嘲笑い、故意に彼の肩を蹴飛ばしながら歩いていきますが、ケインは何がぶつかろうが、心ここにあらずという感じです。

詩はケインの一人称での「語り」であり、北軍の動作を描いた場面であろうが、ボクの描いた世界では、ケインの姿を捉えて離しませんでした。そして、サビの部分は何度も繰り返されます。彼の背景や思いが明かされる毎に、繰り返されるサビの部分は、鮮明さを増していくようにできているように感じます。

~Unclarified issues~

英語の教材として使うべきではないかと感じるくらい、表題曲は勉強になる詩だと感じます。調べて解決できた勉強になる箇所も含めて紹介します。

◆タイトルについて

下記の曲のタイトルにもなっている敗北の夜を表した箇所も、恥ずかしながらファーストコンタクトでは理解できませんでした。

“The night they drove old Dixie down”
アイツらが南部を打ち負かした夜

ポイントとなるのは、drove(drive)の訳し方です。「運転」ではなく、「〇〇の状態に陥らせる」という意味で使われています。マイナスの状態に追いやるようなニュアンスで使われるようです。そう考えると、downを少し前に出てくる“Richmond had fell”のfell(fall)と同じく「陥落」というような意味で訳すことで、スッと意味が通ります。

◆仮定法について

昔、授業で習った仮定法、記憶のどこかに片づけたまま、行方不明になってしまったようです。“should never have done”で、やってしまった事に対して「やるべきではなかった」と言う時に使われる表現です。

Ya take what ya need and ya leave the rest
But they should never have taken the very best
普通は欲しいものだけ持って行って、残りは置いていくだろ
でも、奴らは一番大事なものまで持っていったんだ

前半の文も、解釈が難しかったです。Ya(you)を一般的な人と解釈して、力技で胡麻化しました。。。後半部分が仮定法。“the very best”は「一番重要なポイント」のようなニュアンスで使われるようです。それが戦死した兄弟の事なのか、それとも南部人としての誇りなのか、この議題だけでも長く議論が出来そうです。また、個人的にはこの部分の脚韻がとても好きです。綺麗にピースがハマった時のような感覚。ロビー・ロバートソンの緻密な計算に感動します。

◆旧約聖書由来の表現?

リフレインを除いた場合、最後のセリフとなる下記の箇所は、全く理解できませんでした。

“You can’t raise a Caine back up when he’s in defeat”
もうこれ以上は悪さはさせないからな

アメリカの公式ファンサイトの中でも、上記部分は議論されていました。アメリカ人にとっても難解なようで、言葉遊びではないかという意見もあります。ただ、どうやら旧約聖書『創世記』の中の説話「カインとアベル」が関連してくるというのが共通認識のようです。

簡単に解説すると、アダムとイヴの息子であり、兄のカインが弟のアベルを殺してしまう物語です。弟に嫉妬して殺すわけですが、神に弟の行方を聞かれても、知りませんとカインは言います。人類最初の殺人者であり、最初に嘘をついた者としてカインは描かれています。そんな殺人者の精神を呼び起こすイメージで“Raise Cain”で「騒ぎを起こす、トラブルを起こす」という意味を表すようです。日本語の辞書には載っていないのですが、英英辞典などには確かに掲載がありました。そこまで理解出来ても、文の後半の繋がりが分からす、グチャっと胡麻化しました。。。。

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