~About the Song~

表題曲は、スティングの1993年発表のアルバム『Ten Summoner’s Tales』の収録曲です。英国チャートで16位、米国チャートで23位と、商業的なヒットとはなりませんでしたが、スティングの代表作とされ、エヴァ・キャシディなど、多くのミュージシャンにカバーされています。

2007年に出版された 『Lyrics by Sting』の中でスティング自身が、イングランドの自宅近くにあった大麦畑から着想を得て作詞したものだと語っています。風が大麦の表面を揺り動かす様がまるで海原の金色に光る波のようで、風が大麦と愛を交わしているようだったと当時の経験を語っており、第4スタンザでは、その情景がそのまま詩に落とし込まれています。因みに、ここでのスティング邸とは、家族と一緒に移り住んだイングランド南部ウィルトシャーの家を指しています。ウィルトシャーについて調べてみると、あの有名なストーンヘンジや、ミステリーサークルがある街のようです。目の前いっぱいに広がる草原の景色が想像できますね。

~Translation~

You’ll remember me when the west wind moves
Upon the fields of barley
You’ll forget the sun in his jealous sky
As we walk in fields of gold
麦野原に西から風が吹けば、僕の事を思い出してくれるだろう
将来、黄金の世界を一緒に歩く時には、
嫉妬深く空に浮かぶ太陽の事なんてどうでもよくなるさ
So she took her love for to gaze awhile
Upon the fields of barley
In his arms she fell as her hair came down
Among the fields of gold
彼女は麦野原をしばらく眺めたくて、
恋人を連れて行ったんだ
彼女は髪を下ろして、彼の腕に抱かれた
黄金の野原の中でさ
Will you stay with me? Will you be my love?
Upon the fields of barley
We’ll forget the sun in his jealous sky
As we lie in fields of gold
僕のところに居てくれるかい?僕の愛を受け取ってくれるかい?
黄金の野原の中でさ
黄金の野原で二人して寝転んでいる間は、嫉妬深く空に浮かぶ太陽は忘れられるだろう
See the west wind move like a lover so
Upon the fields of barley
Feel her body rise when you kiss her mouth
Among the fields of gold
見てごらん。西からの風が恋人を愛撫するように
麦野原を吹き抜けていくよ
感じてごらん。口づけするときに、彼女の体がうずくのを
黄金の野原の中でさ
I never made promises lightly
And there have been some that I’ve broken
But I swear in the days still left
We’ll walk in fields of gold
We’ll walk in fields of gold
僕は軽い気持ちで約束なんてした事ないよ
それでも、幾つか約束を破ってしまったね
でも、残りの日々は誓うよ
黄金の野原を一緒に歩いていこう
黄金の野原を一緒に歩いていこう
Many years have passed since those summer days
Among the fields of barley
See the children run as the sun goes down
Among the fields of gold
麦野原で過ごしたあの夏から何年も経ったね
見てごらん。黄昏の中、子供達が走っているよ
黄金の野原の中をさ
You’ll remember me when the west wind moves
Upon the fields of barley
You can tell the sun in his jealous sky
When we walked in fields of gold
When we walked in fields of gold
When we walked in fields of gold
麦野原に西から風が吹けば、僕の事を思い出してくれるだろう
嫉妬深く空に浮かぶ太陽に言ってやれよ
麦野原を一緒に歩いた時の事をさ
麦野原を一緒に歩いた時の事をさ
麦野原を一緒に歩いた時の事をさ

~First Impression~

スティングらしい、しっとりとしたメロディにウトウトとしてきます。麦野原の情景が脳裏に浮かんできますが、それぞれのシーンの繋がり、登場人物の関係性、時間の流れ、全てがぼんやりとしていて、すんなり理解出来ない難解な詩となっています。麦野原を舞台にした恋の歌である事は分かりますが、どうも複雑な関係が描かれているようです。一読するだけでも、読解し甲斐のある作品だと分かります。

~Interpratation~

◆舞台設定から考える“the sun in his jealous sky”について

I,heyou,sheの恋の歌である事は明らかですが、“the sun in his jealous sky”は二人にとって都合の悪い存在として登場します。直訳すると「嫉妬いっぱいの空の中の太陽」となります。英語としては、“in the jealous skyが自然かと思われますが、意図的にhisを使いsunに実態を持たせようとしているように感じます。訳としてはざっくり縮めて「嫉妬深く空に浮かぶ太陽」としてみました。

では、二人を嫉妬深く見ている太陽とは何を意味するのでしょうか?一つとしては、恋の三角関係のような解釈があるかと思います。太陽は古くから月と対比させて男性の象徴とされており、ここでも男性名詞として使われている為、Iyouの間に入る「男」と解釈できます。「あんな奴(太陽)の事は忘れてしまえ。俺たちは麦野原で恋をしたんだ」と歌っている事になります。色々な解説サイトを覗いてみても、sunを夫と解釈したり、浮気相手と解釈したり、比較的妥当な解釈のようです。

ボクとしては、そんな月9ドラマのような小さな恋の話ではなく、壮大なスケールの詩と考えて解釈します。まず、『The Art of Noise: Conversations With Great Songwriters』というインタビュー集の中で、Fields Of Goldの舞台設定についてスティングが述べた内容を紹介します。

“I’m using poetic license to alter syntax. I wanted to create a timeless idea that the song could have been written in the sixteenth century.”

スティングは、古い文法を使い、16世紀の古典作品のような雰囲気を意図的に作り上げたようです。また、この曲を収録しているアルバム『Ten Summoner’s Tales』のアルバムタイトルの由来は、14世紀の古典文学『The Canterbury Tales』の登場人物The summonerと、スティングの本名Sumnerを掛け合わせたものです。詩の舞台は中世英国という前提があります。そんな前提を元に、ここでは、王権を巡る戦争での兵役による離別と考えてみます。「麦野原で楽しくしている間は別れの事は忘れていられるだろう」というイメージです。そう解釈すると、下記の一文の意味がしっくりと落ちます。

But I swear in the days still left
We’ll walk in fields of gold

“in the days still left”は別れの日までの残された数日間の事を指しています。まるで歴史文学の中の一場面のような世界観が広がります。

◆時間軸について

難解でストーリーを掴みづらい詩なので、ざっくりとスタンザ毎の時間軸について解説します。あくまでボクなりの解釈になるので、ご了承ください。

■第1スタンザ:You’ll remember me
将来、天国で一緒になるから、別れの事は気にするなという事を、言っています。時間軸としては、戦地へ向かう別れの場面と考えます。別れ際に死ぬ事を覚悟して、男が女に言っているのではないでしょうか。
“As we walk in fields of gold”が混乱させる一文です。weがyouであれば、「麦野原を歩いた時には別れの悲しみを忘れられるよ」という解釈になりますが、weになっています。別れてから再び二人が一緒になる時、fieldsの冠詞が抜けている事から、概念的なものと捉え、麦野原の情景と重ねた「天国」と解釈します。訳としては、「将来、黄金の世界を一緒に歩く時」としました。

■第2スタンザ:So she took
場面は過去へ移り、二人の出会いと恋に落ちた時の事をナレーター的な視点から語っています。第二スタンザから第五スタンザまで、時間軸は継続しており、二人が愛を深めていく過程が描かれています。

■第3スタンザ:Will you stay with me?
恋の告白の場面です。また、この段階で別れなければいけない事は判明しており、「麦野原にいる時間は嫌な事を忘れていられる素敵な時間だ」と言っています。

■第4スタンザ:See the west wind
ここでは、麦野原に二人で一緒にいる場面が描かれています。前述のとおり、風を男性、麦野原を女性に見立てて、愛の営みと重ねています。スティングのインスピレーションはこの景色から始まっており、恐らく、このスタンザから詩作が始まったのでしょう。

■第5スタンザ:I never made promises lightly
男性が女性に語りかけている場面です。「ずっと一緒にいるって約束したのに、約束を破ってしまってゴメン」というニュアンスでしょうか。別れは来るけれど、残りの日々は麦野原を一緒に歩こうと語っており、麦野原が二人にとって一番大切な場所である事が分かります。

■第6スタンザ:Many years have passed
色々な解釈が出来そうなところですが、二人が天国から、この世を覗いている場面と考えます。詩の中で最も時間軸が進んだ場面です。永遠の愛を手に入れ、幸せに包まれた素敵な場面が描かれています。

■第7スタンザ:You’ll remember me
最後の締めは、第一スタンザで描かれた二人の別れの場面へと戻っていきます。「辛くなったら、麦野原で一緒に歩いた事を思い出してごらん」と男が語りかけています。

出会い、恋、死別、天国での再会、上下巻に分かれるような超大作のスケールをスティングは短い詩の中で表現しています。スティング、恐るべしです。

~Unclarified issues~

◆なぜ、太陽?

難解な詩であり、細かい英語表現の疑問点を挙げていくと、大変な事になるので、スルーとします。1点、英語表現とは別で、どうしても理解できなかった点があります。なぜ、悪役的な役割を太陽に持たせたのか?という点です。自分の解釈が大幅に間違っているのでは、と思わずにはいられなくなります。。。麦野原を黄金に光らせているのは、太陽の光です。麦を大きく育てるのも太陽の光です。ポジティブなイメージが感じられる太陽をなぜ、悪役に仕立てたのか?普通に考えて、雲(cloud)などの方が自然ではないか?音的な問題?どうしても、ミスマッチに感じてしまうのはボクだけでしょうか?

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